コラム

産業廃棄物 2021.01.19

廃プラスチック類の排出状況・特性を徹底解説。リサイクル手法や地球環境へ与える影響もご紹介

環境廃棄物回収ケミカルリサイクルマテリアルリサイクルサーマルリサイクル

世界的に環境問題への関心が高まっている中、他の産業廃棄物と比べて特に問題視されているのが廃プラスチック類です。 この記事では、日本の廃プラスチック類の排出状況や特性、リサイクル手法などについて徹底解説! 併せて、海洋プラスチック問題や最終処分場の利用状況逼迫など、廃プラスチック類が引き起こす地球環境への影響も詳しく解説します。

1.日本のプラスチックごみ排出量は“世界第2位”!

環境汚染、資源の枯渇、最終処分場の利用状況逼迫…etc。

 

近年は地球環境に関して様々な課題を抱えていますが、その中でも日本において特に問題視されているのが廃プラスチック類(プラスチックごみ)の排出量です。

 

令和3年度における産業廃棄物の全国排出量はおよそ370,568千トンで、廃プラスチック類の年間排出量は6,876千トン!

国際的に見ても日本のプラスチックごみの排出量は多いです。

2018年6月に発表されたUNEP(国連環境計画)の報告書では、1人当たりプラスチック容器包装の廃棄量において、日本はアメリカに次いで2番目に多い国であると発表されました。

 

※参照:産業廃棄物排出・処理状況調査報告書

※参照:日本人のプラごみ廃棄量は世界2位。国内外で加速する「脱プラスチック」の動き

 

 

2.そもそも廃プラスチック類とは?

日本はアメリカに次いで廃プラスチック類の排出量が2番目に多い国と解説しましたが、実は数ある産業廃棄物の中でも、廃プラスチック類は比較的排出量の少ない品目です。

年間排出量の43.9%を占める汚泥や、21.9%を占める動物のふん尿と比べると、廃プラスチック類は1.9%と少ないことがわかります。

それにも関わらず、なぜいま廃プラスチック類の排出が問題視されているのでしょうか?

 

その答えは、廃プラスチック類の特性が関係しています。

 

そもそも廃プラスチック類とは産業廃棄物の一種であり、“事業活動に伴い生じた合成樹脂くず、合成ゴム、合成繊維くずなどの固形状および液状の廃プラスチック類”のこと。

主な例を挙げると、使い終えた飲料用ペットボトルや包装用のラップ、お弁当の容器、ゴム手袋、固形状・液状のすべての合成高分子系化合物、プラスチック製品の製造過程で生じる破片などを指します。

 

原則、廃プラスチック類を処分する際には、まず資源ごみ・可燃ごみ・不燃ごみに分類されます。

処分方法は分類によって様々。

資源ごみとして分類されたものはリサイクルされ再資源化できますが、可燃ごみに分類されたものは焼却処分、不燃ごみに分類されたものは埋め立てるなどして処理します。

 

環境省が発表した令和3年度における産業廃棄物排出・処理状況調査報告書によると、廃プラスチック類の処理状況は、再生利用量62%、減量化量23%、最終処分量16%でした。

最終処分の比率は、燃え殻(22%)、ゴムくず(18%)に次いで、廃プラスチック類(16%)という順になっています。

この結果から、廃プラスチック類は産業廃棄物の中では排出量が少なめながら、比較的最終処分率が高いということがわかります。

 

 

3.廃プラスチック類の処理

前項でご紹介したように、廃プラスチック類は比較的最終処分率が高い廃棄物ですが、現状日本国内の最終処分場の利用状況はかなり逼迫しています。

そのため、問題を解決するためにこれからは再資源化が可能な廃プラスチック類を、より積極的にリサイクルしていかなければなりません。

 

現在行われている廃プラスチック類の主なリサイクル手法は、次の3つ。

ひとくちにリサイクルといっても様々な種類があり、それぞれ手法は異なります。

 

【こちらの記事も合わせてご覧ください】

広義で使用される“リサイクル”という言葉。具体的な3種類のリサイクル方法などをご紹介

 

3-1.マテリアルリサイクル

“マテリアル”とは、材料・原料という意味を持つ言葉。

マテリアルリサイクルとは、廃プラスチック類の材質を活かして他の製品の材料としてリサイクルします。

工程は事業者によって異なりますが、一般的には塩ビボトルや着色ボトルを除去した上で、選別・粉砕等を行いフレーク状やペレット状にして再びプラスチック製品の原料として再生利用されます。

廃プラスチック類をマテリアルリサイクルする場合は、主に下敷きやバッグ、食品用トレイ、ペットボトルなどに生まれ変わることが多いです。

 

【こちらの記事も合わせてご覧ください】

「マテリアルリサイクル」とは?廃棄物を再利用する事例もご紹介

 

 

3-2.ケミカルリサイクル

“化学的再生法”とも呼ばれるリサイクル手法。

廃プラスチック類に熱を加えるなど化学的に処理し、ガスや燃料といった化学原料にリサイクルする手法です。

廃プラスチック類を石油に戻す油化処理を行って燃料にしたり、熱で分解しガス化させて一酸化炭素や水素などを生成したりと、様々な化学的処理方法があります。

 

【こちらの記事も合わせてご覧ください】

「ケミカルリサイクル」とは?廃棄物処理やリサイクル手法にお悩みの方は必見!

 

3-3.サーマルリサイクル

サーマルとは、“熱による”という意味を持つ言葉。

サーマルリサイクルは、廃棄物を焼却処分するときに発生した熱エネルギーを回収・利用するリサイクル手法です。

廃プラスチック類の焼却時に発生した熱エネルギーを回収し、発電や暖房設備・温浴施設などの熱源に使用します。

 

 

4.地球環境への影響

廃プラスチック類はこれまでも排出量の多さなどが世界的に問題視されていましたが、近年特に注目されるようになった転機の一つは、“中国による廃棄物の輸入規制”です。

 

これまで中国は、世界中から廃棄物を買い取っていましたが、適正な再資源化が追い付かず環境問題が生じたために輸入が禁止になりました。

そのため、日本を含めた各国が廃棄物の処理先に困るようになってしまいました。

 

廃プラスチック類は、主に地球環境へ以下のような影響を与えるとされています。

 

■海洋プラスチック問題

世界では、廃プラスチック類が海に漂い生態系や海洋環境に悪影響を及ぼす“海洋プラスチック問題”が年々深刻化しています。

いま既に世界の海に存在しているといわれる廃プラスチック類は、なんと合計で約1億5,000万トンだとか!

適切に処分されずに海に流されてしまった海洋プラスチックは、海洋汚染や生態系に甚大な影響を与えています。

 

参照;海洋プラスチック問題について

 

■最終処分場の利用状況逼迫

最終処分場とは、不要品のうちリユース(再利用)・リサイクル(再資源化、サーマルリサイクルを含む)が困難なものを処分するための施設のこと。

廃プラスチック類はリサイクルによる有効利用率が低いため、最終処分場で処分されるケースも多いです。

ところが、廃棄物を埋め立てられる日本国内の最終処分場は、全国平均であと20年ほどで残余容量が尽きると環境省から発表され、現在進行形で問題視されています。

 

「ごみを埋め立てる場所がないなら新たに増やせばいい」と考える方もいますが、土地の確保や周辺住民の理解、環境への影響など、新たに埋め立て地を増やすのは簡単とはいえません。

そのため、最終処分場の寿命が差し迫っているいま、私たちはリサイクル活動などを積極的に行うことによって、埋め立て地の問題をできるだけ先延ばしにする必要があります。

 

【こちらの記事も合わせてご覧ください】

最終処分場(埋立地)の区分・構造について。世界の最終処分場の事情も解説!

最終処分場の“残余年数”をご存じですか?日本における最終処分場の現状・問題解決のためにできること

 

 

5.環境に優しい“循環型社会”の形成を目指して

冒頭でも解説したように、日本は、世界的に見ても廃プラスチック類の排出量が多い国です。

廃プラスチック類の排出量がこのまま増え続けると、環境汚染や最終処分場の利用状況逼迫など様々な問題を引き起こす可能性があるため、今後は排出量を減らしつつ積極的にリサイクルにも取り組んでいかなければなりません。

 

そんな状況を打破するために、日本においては近年ではレジ袋の有料化が開始されたり、業界を問わず多数の企業がサステナブルな取り組みを実施したりと、環境保全に向けて各方面で様々な取り組みが拡大しています。

 

これから私たちが求められることは、無駄に廃棄物を排出しないことはもちろん、限りある資源を自らの手で再利用・再資源化していくこと。

“循環型社会”を形成するために、積極的にリサイクルを行っていくことが必要です。

 

例えば、産業廃棄物として排出された廃プラスチック類の処分方法を見直したり、リサイクルできる業者に処分を依頼したりと、私たちにできることはたくさんあります。

現状抱えている環境問題の解決のためにも、これからの未来のためにも、これからはより一層廃棄物のトレーサビリティを高めていきましょう!

 

ちなみに、リダクションテクノでは廃棄物に関する様々なご相談に応じています。

廃棄物処理だけでなく、リサイクルやコスト削減に関するご提案も可能です。

廃プラスチック類を始め廃棄物の取り扱いについてお悩みを抱えている方は、ぜひお問い合わせください。

 

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